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2013/11/27

第五十回金馬獎レポート 受賞式編

1126jinma既報のように、『爸媽不在家(ILO ILO)』が金馬奨史上初の東南アジアからの作品賞受賞となり、台湾では獲得トロフィー最多の『一代宗師(グランドマスター)』より話題になっています。
テレビ中継の視聴率も先日新聞で発表されましたが、平均で9%、瞬間では章子怡(チャン・ツィイー)受賞時に13%を超える注目度の高さだったそうです。台湾では5%でびっくりするくらいの高視聴率なので、この数字がいかにすごいかおわかりいただけるでしょう。
さて、その受賞式、プレスルームでの受賞コメントも含めて主なところをお伝えします。(翻訳協力 西本有里)

1126yaoyaoまず、子役や十代の候補者の中で新人賞を受賞したのが、23才の郭書瑤(グォ・シュウヤオ)。『志気』の主演が対象です。名前を呼ばれてからずうっと泣き通しでしたが、プレスセンターに来た時もまだ声が震えていました。
「映画会社の皆さん、スタッフの皆さん、監督、本当にありがとうございました。皆さんが私をサポートしてくれたおかげです。受賞できるとは思ってもみませんでした。すごく嬉しいです。実在の人物を演じましたが、運命にただ従うというのでない所に感動しました。選手達と一緒に仕事をして行く中で、強い絆が生まれました。撮影する中で一番つらかったのは、体力的な面です。それまでとは全く違う筋力を使う必要があり大変でしたが、訓練を重ねて頑張りました。
チャンスをいただければこれからさらに深く役に入り込むよう努力し、様々な役柄に取り組みたいです」

1126li助演男優賞は、『一九四二』の李雪健(リー・シュエジエン)。大陸のベテランで、一見厳しそうですが、笑顔がとってもチャーミングです。
「10年前に監督からこの本をもらったのですが、いろいろ困難があってやっと撮れた作品です。たくさんの方々に注目して頂き、ありがとうございます。この機会を下さった監督と映画会社に感謝します、そして金馬奨、李安監督と審査員の皆さん、私にこの賞を与えて下さってありがとうございます。
20年前、中国の映画人が初めて金馬奨に参加した時、場所も今日と同じ國父記念館でした。ここ数年の中国・香港・台湾の映画の発展は違った面を見せ始めています。中華圏の映画の重要度も益々高まり、この傾向が続いて行く事を期待します」

1126qiいま台湾で公開中の『看見台灣』は一億間近という大ヒット。見事ドキュメンタリー賞を受賞しました。
公務員生活を捨ててこの記録に挑んだ監督の齊柏林(チー・ボーリン)は、資金や機材調達の苦労を語り、それ故の喜びをしみじみと語りました。
「台湾全土の人、世界の人々に台湾の現状を見てもらいたいと思い、この映画の製作を決めました。空中撮影用カメラはその時台湾にはなく、アメリカから70万ドルで購入しました。公務員にとって70万ドルはかなり高い金額です。でも我々にはまだヘリコプターがありませんでした。その時にもう一人のパートナーが参加してくれる事になり、一緒に投資者を探し回りました。この映画には9,000万元がかかっているのですが、台湾のドキュメンタリー映画にとって少ない金額ではありません。最新の機器とヘリコプターを使って撮影した映画です。11月1日より公開されましたが、ドキュメンタリー映画の記録を今どんどん更新しています。魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督からも、興行成績が一億を超えるよう頑張れ!とショートメッセージをもらいました」

1126yang「爸媽不在家(ILO ILO)」で助演女優奨を獲得した楊雁雁(ヤオ・ヤンヤン)は、初のマレーシア人受賞者です。
「この賞を頂いてとても興奮しています。絶対に起こり得ない事だと思っていましたから。金馬奨は小さい頃から見ていた外国の賞で、レッドカーペットを歩く事を夢みていました。この賞を戴けた事は誇らしいし、光栄です。実は、撮影が決まってから妊娠した事を監督に報告すると、私を降ろすと言いました。そこで私は監督に『ほら今の私を見て!お腹もそんなに大きくなっていないし、妊娠してるように見える?撮影中もそんなに体型は変わらないから大丈夫』と説得しました。監督は私に見事に騙され、脚本を書きなおすと言いました。でもその後私のお腹は大きくなって、風船のように膨れ上がっていったのです。映画後半部分の太った私は実際の私なのです。そこで監督は子供を生む所を映画として撮ると言い出したのです。思いがけない事に主人もそれにOKを出し、出産シーンが撮影される事になりました。そのおかげで監督とは本当に良い友人になれました」
ものすごいエピソードですね。それにしても後から気づいたのですが、楊雁雁は「881 歌え!パパイヤ」のパパイヤガールズで2008年の来日時にインタビューしています。なんか、感慨深いです。

1126jacky『十二生肖(ライジング・ドラゴン)』でアクションデザイン賞を受賞した成龍(ジャッキー・チェン)は、成家班(JC Stunt Team)と共に笑顔100%でプレスルームに入ってきました。三人で右から左へカメラに向かって向きと視線を変えていくのが見事に揃っていて、さすが!
「私自身金馬奨と共に育ちました。金馬奨は50周年ですが、私は53年映画を撮り続けてきましたので、これまで時間があれば必ず参加して来ました。私にとって金馬奨は受賞する事が重要なのではなく、とにかく参加する事に意味があると思っています。これだけの人々が参加をしてくれたからこそ50年続いてきました、これからまた50年続いて欲しいです。(ほかの二人を指して)この賞を受賞を出来たので嬉しいのは彼らです、彼らにとっては初めての賞ですから」

1126lin音楽賞を獲得したのは常連の林強(リン・チャン)、4回目は賈樟柯(ジャ・ジャンクー)の『天注定(罪の手ざわり)』が対象でした。
「友達とよく話しているのですが、台湾にはもう少し多くの励ましが必要だと思う、励ましがあってこそ前進できる、そして批判は少なくあるべきだと思う、批判ばかりでは停まってしまう。今日この賞を獲れてよかったです、これが台湾を応援する力になります。私は多くの時間を台湾の仕事に当ててますが、今回は監督が撮影現場に招いてくれ、実際にスタッフと交流し合い、現場の環境を見せてくれました。音楽の創作者は自分を表現する事に重きを置いています、歌手もそう。歌を歌う時は自分を前に出して行きます。しかし成長してから後ろに一歩引くべきだと思うようになりました。何事においても謙虚な態度で多くのことを受け入れるべきだと思います。経験の浅い監督と仕事をする時も、ベテラン監督と仕事をする時も同じようにこのような姿勢で仕事をしています」

1126song今年は優れたドキュメンタリー映画が多かったのですが、その中の一本『一首搖滾上月球』がオリジナル主題歌賞を獲得。ハンディのある子供を持ったお父さんたちがバンドを組んでフェスに参加する、というお話で感動作です。彼らの音楽指導をしたバンド四分衛の阿山も一緒に受賞しました。
阿山「ありがとうございます。監督がお父さん達に会わせてくれたのですが、楽器はプロフェッショナルなものではなかったので、その状態に合わせて曲を書きあげました」
監督「ドキュメンタリー映画がオリジナル主題歌賞を受賞するなんて何と奇妙で面白いのだろうと思いました。出演者達は全員素人です、金馬の受賞は最初であり、これが最後になると思います。次は、皆さんを連れて金曲奨に参加したいです」
リードボーカルのお父さん「このような賞が頂けるなんて思ってもみませんでした、夢のようです。こんな年の人間がロックを歌い、このような舞台に上がれるとは思ってもいませんでした。不可能を可能にしました。皆さんありがとうございます」

1126ansony新人監督賞とオリジナル脚本賞の二つのトロフィーを受け取った陳哲藝(アンソニー・チェン監督は、喜びを隠しきれません。
「本当に意外です、このような賞を獲得できるとは思ってもいませんでしたし、もちろん期待もしていませんでした。なぜなら今までシンガポール映画が獲得した事はなかったですから。俳優には今日は金馬奨に参加して、スター達を見て、パーティーに出席しようと言いながら来ました。私自身のもう一つの小さな願いは、李安監督と握手をして写真を一緒に撮る事でした。
また、脚本賞をもらえるとは思ってもいませんでした、この作品は脚本に一年かけ、さらにもう一年かけて映画を撮りました。これからはもう脚本を書くのは止めようと思っていたのですが、思いもよらずこのような賞を獲得して、自分で書いた脚本で映画を撮るようにと言い聞かせられたような気がしています」

1126tsai監督賞は、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)陳冲(ジョアン・チェン)章子怡(チャン・ツィイー)楊貴媚(ヤン・グイメイ)鄭秀文(サミー・チェン)の五人が、それぞれノミネートされた縁の深い監督たちについて語りながら紹介しました。それも、50年という特別な機会に豪華スターが集まったからこその企画です。
受賞者が書かれたカードを開けた陳冲は、すぐ楊貴媚にそれを渡しました。ここで誰もが受賞者が誰だかわかってしまいますが…はい、監督生活最後の集大成とも言える『ピクニック』の蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)です。因縁の金馬奨での受賞は感無量らしく、何度も涙をぬぐいながら喜びを噛みしめていました。
「この賞を獲る事は本当に難しいです。ですからとてもとても嬉しいです。自分自身を犠牲にしてでも、なんとしてもチームに賞をもたらせたかったのですが、本当に嬉しいです。今回は全員私のとても大好きな監督達でとても光栄です。今回小さい頃から見てきたスターの皆さんを前にこの賞を獲得できて奇跡のような思いです。フランスから帰国したばかりなのですが、トランジットのタイで友達から薦められて『郊遊』の『遊』で文字占いをしてもらいました。友人は『遊』は『有朋自遠方来、水漲船高』、つまり水に縁があれば受賞するだろうという事を暗示しました。でも台湾に戻ったら快晴でどこにも水はないじゃないか、と心配になりました。ただ帰宅すると、上の階の人の所で水が漏れていると聞き、大喜びしました。馬達が足を緩めて私を待ってくれたのか、もしくは足を速めて私に追いついてくれたのか、どちらにしても、とにかくやっと私に賞をもたらしてくれました」

1126tuii接戦だったという主演女優賞は、『一代宗師(グランドマスター)』の章子怡(チャン・ツィイー)がトロフィーを手にしました。
「長い撮影期間でしたが、今思い返すととても幸せな時間だったと思います。この時期にとても辛い事が多かったのですが、自分の苦しみを解き放ってくれたのは、隣の部屋から聞こえてきた張震(チャン・チェン)の叫び声でした。彼は私より苦しんでいるのだと感じたからです。王家衛チームは撮影が長期にわたりますが、スタッフたちをまとめ上げる監督には学ぶところがとても多いと思います。この役を演じる上で本当に苦労が多かったのですが、この役が、そして監督が私を救ってくれました。宮二という役柄の世界の中に私をひき込んでくれました、宮二のすべての感情・考え方を感じる事ができました。本当に監督には感謝しています。監督が作品を撮り続けるなら、私はずっとついて行きます」
初の受賞で、とても獲りたかった賞だったということでしたが、その興奮を押さえつつ落ち着いて喜びを語っていたのはさすがです。

1126xiaokanそして激戦中の激戦、主演男優賞。『郊遊(ピクニック)』の李康生(リー・カンシェン)と発表されると、プレスルームでもかなりどよめきました。
「今回受賞は本当に容易ではありません。なぜならほかの候補者は本当に強い、一人は拳を、一人は拳銃を持っており、もう一人は武侠の達人です。(場内は笑いの渦)自信はありましたが、確信はありませんでした。ついに獲得できてホッとしています。監督がずっと望んでいたので、その思いににきちんと応える事が出来たと思います。ベネチアでは獲れそうで獲れなかったので。
審査員の方々の間ではこの賞を私に与えるのに相当激しい討論があったと思います。審査員の皆さんに感謝します」
ふだんはあまり表情のない、無口な印象が強いショオカンですが、こんな楽しいスピーチをするのですね。

1126tsailiこの後、長年のパートナーである蔡明亮監督が再びプレスセンターに現れ、ツーショットのフォトコールも行われました。受賞式では監督の方が興奮してシャオカンにハグ&頬にキスでした。

いよいよ最後、作品賞の発表ですが、この前に金馬50年歴代の影帝・影后がずらりと並ぶ壮観な図が展開されました。もう、ため息しか出ません。この歴史的な瞬間に立ち会えたことの喜び!そして、そこに50人めの章子怡と李康生が新しい席に座りました。正確には、2009年に黃渤(ホアン・ボー)と張家輝(ニック・チョン)がダブル受賞したので、主演男優としては51人目になりますが…。

1126iroiroそして侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督と李安(アン・リー)監督から発表された作品賞は、シンガポール映画の『爸媽不在家(ILO ILO)』。本作は新人監督賞、オリジナル脚本賞、助演女優奨の四冠に輝くという結果です。
参加したスタッフ・キャスト全員でプレスセンターのステージに上がり、陳哲藝監督が代表でスピーチしました。
「本当に意外です。金馬奨の作品の中で、私の作品は一番小さな国の一番小さな予算の作品だと思います。また私自身の初長編作ですからこのような結果になるとは思ってもいませんでした。今回の候補作は私の憧れであるマスタークラスの監督達の作品です。学校では映画関連学部を専攻していましたので、この監督達の作品はすべて授業で分析をし、研究をする対象の作品でした。ですので皆さんが私の先生なのです。
台湾ニューウェーブ映画がなければ、この作品は存在しませんでした。台湾ニューウェーブが私の映画への想いに火をつけてくれたのです。侯孝賢、李安、楊德昌(エドワード・ヤン)監督達が私に映画の視点を教えてくれました。
この映画の予算は50万ドル(NTD1,500)です。製作は辛いものでした。というのも私自身が監督であり、脚本家であり、プロデューサーだったからです。撮影中も資金集めに走りました。このような映画が中華圏の重要な映画祭である金馬奨で大先輩の監督に見て頂けて本当に嬉しいです。
シンガポールの映画がとうとう中華圏の皆さんに見てもらえました、金馬奨がそのチャンスをくれました。金馬奨を通してシンガポール映画のレベルをみてもらえました、金馬奨、本当にありがとうございます。これがシンガポール映画のマイルストーンになると思います。今回の受賞がシンガポールの若い映画人に力を与え、夢を追い続ける原動力になること、シンガポール映画のニューウェーブを起こせる機会になれば嬉しいです」

1126an最後に、審査委員長の李安監督が登壇し選考の経緯を説明、簡単な質疑応答を行いました。
「今回の結果は、4回の討論を経て決定しました。どうしてその映画が好きかという理由をそれぞれ発表していき、他の審査員の評価に同意しない場合は、その理由をきちんと説明しなくてはいけないといいうルールで進めました。全ての作品に全員が高い敬意を払っていました。詳細に検討し、最終的に『爸媽不在家(ILO ILO)』が一番多くの人が好きな作品になったので、このような決定を下しました。
監督賞については、全員一致で蔡明亮監督に決定しました。
李康生は2回の討論を経て決定しました。1回目の投票でも李康生が最も多かったのですが、過半数ではなかったので2回目の討論にもつれ込みました。
章子怡も3回の討論を経て決定しました。コメディ映画という演技力が試される難しいジャンルにおいて、鄭秀文(サミー・チェン)の演技は素晴らしかったです。しかし、章子怡のエンディング部分での深みのある演技が決め手になりました。
非常に長い時間をかけてこの4つの大賞を決定しました。
すべての候補作はどれも素晴らしく、この中から一作を選出するのは本当に難しい作業でした。ギリギリまで討論を重ねた結果です。そして、私たちも入選作品から多くのことを学びました」

またこの後の受賞パーティで、侯孝賢が来年から張艾嘉(シルビア・チャン)に主席をバトンタッチすることが発表されました。

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