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2015/12/31

2015年の台湾映画を振り返る

0728ourtimes3今年の台湾映画のトピックスは、なんと言っても4.1億台湾元という『我的少女時代』のメガヒットと、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『刺客聶隱娘(黒衣の刺客)』がカンヌ国際映画祭で監督賞に輝き、金馬奨でも主要5部門を制覇して圧勝したことでしょう。
また、下半期に入ってのダークホースはドキュメンタリーの『灣生回家』、多くの観客の涙を絞ったことも話題になりました。

興行成績は、以下のような順位になっています。
『我的少女時代』
『大囍臨門』
『紅衣小女孩』
『刺客聶隱娘』
『角頭』
『鐵獅玉玲瓏2』
『灣生回家』

1014dalu6『我的少女時代』は台湾の歴代ランクの5位に躍り出て、4位の『那些年,我們一起追的女孩(あの頃、君を追いかけた)』に迫る勢いでした。男女それぞれの視点で語られるこの二作のちょっと懐かしい高校時代は、様々な良質の青春映画が作られてきた中で大きく台湾人の心を掴んだポイントのようです。
台湾だけでなく香港でも大陸でも大ヒットした本作は、プロデューサーとして数々のヒットドラマを送り出してきた陳玉柵(チェン・ユーサン)がその法則を映画に生かした成功例で、キャラクターとのベストマッチングでそれまで無名だった王大陸(ワン・ダールー)を一躍スターにしました。

1231jiaxi旧正月映画の台湾語コメディは『大囍臨門』と『鐵獅玉玲瓏2』の二作が対決しましたが、台湾で唯一"スターで客を呼べる"猪可亮(ジュー・ガーリャン)が娘を思う父親を演じた『大囍臨門』が笑いと涙で2.5億元をあげ、澎恰恰(ポン・チャアチャア)と許效舜(シュー・シャオシュン)コンビの『鐵獅玉玲瓏2』に圧勝しました。

1231niannian春には張艾嘉(シルビア・チャン)監督の『念念』が公開され、半年後に東京フィルメックスで上映されました。台湾で活躍する日本人俳優蔭山征彦さんの脚本に目を留めて製作されたもので、久々の梁洛施(イザベラ・リョン)、張孝全(チャン・シャオチュアン)、柯宇綸(クー・ユールン)が織りなす心の葛藤を描いた作品です。


1231gatao予想外のヒットで業界人も驚いた『角頭』は、黃鴻升(ホアン・ホンシャン=小鬼)主演のヤクザ映画です。公開時期に強力な対抗馬がなかったのと台風が幸運をもたらしたというのが現地での声でした。
これと対照的に台湾の国民的アイドルOPENちゃんの3Dキャラクターによる実写映画『OPEN! OPEN!』は、話題作が揃った夏休みにクオリティの問題で惨敗。

1231brideこの夏休みにスマッシュヒットを放ったのが、台湾に伝承する"死者との結婚"をテーマにしたホラー映画『屍憶』でした。日本から一瀬隆重プロデューサーをはじめスタッフが多く参加して、台湾大学との実験的コラボで製作した短編をもとに長編映画にした作品です。新人監督を、吳慷仁(ウー・カンレン)と謝欣穎(シェ・シンイン)、田中千繪というキャストが支えました。

1231redそして後半にもう一本ホラー映画『紅衣小女孩』が公開され、こちらも台湾の都市伝説である"赤い服の少女"をモチーフにして好成績を収めました。短編映画『保全員之死』で賞を総ナメにした期待の新進監督程偉豪(チャン・ウェイハオ)と進境著しい許瑋甯(アン・シュー)と黄河(ホアン・ハー)というフレッシュな主演コンビが良い化学反応を起こして成功。

1001jinma2ベルリン国際映画祭のELSE - The Siegessäule Readers' Jury Awardで受賞した『醉.生夢死』は、台北の裏社会とその周縁でもがく若者たちを描いて台北電影節で最高賞を含む主要6部門で圧勝、金馬奨でも4部門獲得し、今年の東京フィルメックスでも上映されました。
ちなみに、監督の張作驥(チャン・ツォーチ)は刑事事件で3年10ヶ月の実刑を言い渡されベルリンでの受賞の後収監されています。

1001jinma夏休み映画のトリを飾った『刺客聶隱娘(黒衣の刺客)』は、侯孝賢監督作品として一番興行成績が良かったそうです。
唐代の中国を舞台に数奇な運命に翻弄される女刺客を、監督のミューズである舒淇(スー・チー)、標的となる暴君の張震(チャン・チェン)に加え、窮地に追い込まれた女刺客を助ける日本人青年に妻夫木聡が出演したのも話題になりました。日本では日本版ディレクターズカットで妻夫木聡と忽那汐里のシーンがやや多くなっているバージョンで公開しました。

0714bairi3秋公開の注目作林書宇(トム・リン)監督の自身の喪失と再生の体験をもとに作られた秀作『百日告別』は、アジアンパラダイスでは特に力を入れてご紹介してきましたが、林嘉欣(カリーナ・ラム)が金馬奨で主演女優賞に輝き、東京国際映画祭で上映されました。
この作品は台北電影節のクロージング作品としてお披露目されましたが、林嘉欣と張書豪(チャン・シューハオ)のあるシーンが台湾人の道徳観で受け容れられない人が多いということで、台湾公開時にはカットされました。ただ、監督の思い入れとリサーチにより日本ではオリジナルバージョンを上映し、行定勲監督をはじめ多くの絶賛を浴びています。

0823taitang2林書宇(トム・リン)監督と親交の厚い鄭有傑(チェン・ヨウジエ)監督も新作『太陽的孩子』を発表、台北電影節では観客賞を受賞しました。
本作は台湾東部を舞台に若い人達が台北などの都会へ出て行ってしまうため農業の継承者がおらず、リゾート開発の波により先祖代々の土地が売られていく現実を、アミ族のある家族を中心に描いています。メッセージ性の強い映画ですが、ドラマとしてのクオリティも高い作品です。

1231wanseiそして、冒頭でも記したようにドキュメンタリーの『灣生回家』が感動の嵐を呼びました。
「灣生」とは、日本統治時代に台湾で生まれ育った日本人のことで、1945年に敗戦により日本に強制帰還となりました。灣生の中には帰国しても台湾へ思いを残す人も多く、この人たちの14年の取材記録が映画になりました。
これに関しては、取材者でプロデューサーである田中實加さんをサポートして映画化を実現させたもう1人のプロデューサー范健祐さんの功績が大きいことを、ぜひこの機会にお伝えしておきたいと思います。

1231windこの他に台湾映画界の重鎮、王童(ワン・トン)監督が13年ぶりの新作『風中家族』を発表しました。台湾における外省人の苦悩を描いた本作はさすがのクォリティの感動作で、東京国際映画祭で上映されました。
主役の楊祐寧(ヤン・ヨウニン)が故郷に残した妻子を思いながら、台湾で「家長」として生き抜く男の一生を見事に演じ、アイドル脱皮を図る胡宇威(ジョージ・フー)も良い挑戦の機会となったようです。

0513tff1久しぶりといえば、宜蘭縣文化局長を勤めたため創作活動を一時休止していた鄭文堂(チェン・ウェンタン)監督が『菜鳥』で復帰したこともうれしいニュースでした。新人の刑事が警察内の不正を目の当たりにし、正義感で立ち向かうもののさまざまな圧力や陰謀に巻き込まれていく中、愛や信頼を描いた作品で、宥勝(ヨウシェン)、莊凱勛(キャッシュ・ジュアン)、簡嫚書(ジエン・マンシュー)が出演しています。

3日間に渡り、2015年の中華圏の映画を振り返ってご紹介しました。
今年もご愛読ありがとうございました。
来年もアジアンパラダイスをどうぞよろしくお願いします。
皆さま、良いお年を〜!

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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