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2017/07/18

2017台北電影獎受賞式レポート

0718tff1今年の台北電影節は期待作が少なくかなり地味なラインナップでしたが、受賞式で主演男優賞を吳慷仁(ウー・カンレン)が、主演女優賞を尹馨(イン・シェン)が獲得したのは納得のうれしい結果でした。
今回3年ぶりに吳慷仁にインタビューし、この3年のステップアップが大きいと記事に書きましたが、この受賞でさらに高みに登りました。テレビのアワード金鐘奨で一昨年助演男優賞、去年主演男優賞、そして今年台北電影獎で主演男優賞ですから、凄いスピードです。今後は映画中心に俳優活動をしていくと言っていたので、今回の受賞はかなり励みになったのではないかと思います。
映画大使をつとめ主演男優賞獲得と、今年の台北電影節はまるで"吳慷仁祭り"。

0718tff2しかし、この主演男優賞は圧勝だったわけではなく、『大佛普拉斯』の陳竹昇(チェン・ジュウシェン)、『川流之島』の鄭人碩(チェン・レンシュオ)と3人の候補が審査員の間で一時間半も討論され、その結果僅差で吳慷仁に決まったそうです。
授賞理由は「役柄の特質を的確に把握し、おおげさではなく細やかな役作りで内在する心理を描写した」ということでした。
本人は、トロフィーを受け取って「わぁ、わぁ、わぁ、トイレに行きたくなった。(笑い)実はこの映画は最初はあまり好きではなかったが、一年後に改めて見てわかりました。映画はいかに編集するのかと、いうことを。監督、あなたは本当に勇敢です」とスピーチしました。
そして、自分を育ててくれた李啟源(リー・チーユエン)監督と簡麗芬(ジエン・リーフェン)プロデューサーに感謝していたのが印象的でした。

0718tff3主演女優賞の尹馨は、映画、ドラマ、舞台で活躍する受賞歴も多い演技派です。ドラマアワード金鐘獎では3回も主演女優賞に輝き、台北電影奨では2013年の『權力過程』で助演女優賞、そして今回は『川流之島』で見事主演女優賞を獲得しました。
実はこの『川流之島』は台湾で特徴的な「電視電影」という映画クォリティの単発ドラマで、すでに同作で2016年の金鐘獎の主演女優賞を受賞しています。
受賞の前日が39才の誕生日だったということで「最高の誕生日プレゼントです」とスピーチしていました。
こちらも『德布西森林』の桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、『順雲』の陳季霞(チェン・リーシア)、『再見瓦城』の吳可熙(ウー・カーシー)との激烈な争いの結果の授賞だそうです。
授賞理由は「役柄の解釈と演技のリズムのバランスが見事で、繊細で生命力とリアル感あふれるた厚みのある人物を作り上げた」ということです。

0718tff4助演男優賞は、『強尼.凱克』の黄遠(ホアン・ユエン)。2010年に王小棣(ワン・シャオディ)監督に見出されて映画『酷馬』での主役デビュー以来、立て続けの映画やドラマの主演作で受賞歴を持つ若手実力派です。
次回作のためかスキンヘッドが大人っぽく見えますが、まだ26才。今回の受賞は「思いもよらなかった。とても不思議な感覚です」と戸惑っていました。
審査員によると『目撃者』の李淳(リー・シュン)との一騎打ちだったそうですが、「自閉症の少年という難役を完全に把握し微妙なところを的確に演じ、見る者に納得と共感をもたらした。等身大のキャラクター作りに成功した」ということで彼が勝ち取りました。

0718tff5『順雲』で助演女優賞に輝いた劉引商(リウ・インシャン)は芸歴50年、60作を超える作品に出演し80才にして初の受賞を果たしました。登壇した時には、会場の全員が起立して敬意を表していました。
「心臓が強くて良かった。でないと、私はここで気を失って倒れてしまったでしょう」と笑わせていましたが、「動ける限り、演技を続けていきます」と力強く宣言していました。
授賞理由は、「特殊な病状の中で、とても例の少ない心理状態を繊細に表現した」ということです。

0718tff6新人賞に輝いたのは、『強尼.凱克』の瑞瑪 席丹(リマ・ジタン)、台湾とレバノンのハーフで台湾生まれのレバノン育ちです。
初めての映画での受賞に驚き「頭が真っ白です。何もスピーチを用意していませんが、初めての映画で初めてのノミネート、そして受賞でとてもうれしいです。監督が私を起用してくれた勇気に感謝します」とうれしそうに語っていました。
『自畫像』のKiwebabyと一騎打ちだったそうですが、「役の解釈が的確で、都会で生活する貧しい若者の心情を内面と外面の両方から表現した」という授賞理由です。

0718tff7さて、作品の方は『大佛普拉斯』が最高賞の100万元大賞ほか長編劇映画賞、編集賞、音楽賞、美術デザイン賞の5部門を制しましたが、『強尼.凱克』と最後まで競り合ったそうです。
二度目の100万元大賞を獲得した黃信堯監督は、「一人の新人監督のために多くのスタッフがサポートしてくれて、本当に幸せです。映画はチームで作る総合芸術ですから」と、謙虚なスピーチでした。
授賞理由は、「10数年ドキュメンタリーを撮ってきた黃信堯監督の初めての長編劇映画だが、風格があり、都会とは違う独特のローカル色を生かした物語には自信とユーモアがあふれている。テーマも手法も成熟して、観客にこれまでにない映像体験をもたらした」でした。

0718tff8台北電影奨では歴史的に強いドキュメンタリー部門ですが、審査員の易智言(イー・ツーイエン)監督が『日常對話』、『徐自強的練習題』、『黑熊森林』、『灣生畫家─立石鐵臣』、『媽媽與宗憲』と今年も秀作揃いだと言っていましたが、最終的には『日常對話」』、『徐自強的練習題』、『黑熊森林』の三作が競ったそうです。
娘と共にトロフィーを受け取った黃惠偵監督は「ありがとうございます。映画が私に大きな転機を与えてくれ、世界を見る可能性をもたらしてくれました。映画は社会運動です」と語りました。
「母と娘の関係性が、見る者を震撼させた。最も辛く、最も困難な部分を監督は勇気を持って三世代の女性の間の情感で浮き彫りにした。母娘の和解という意図に心を動かされる」というのが、授賞理由です。

0718tff9短編部門は、予想通り獄中の張作驥(チャン・ツォーチ)監督が刑務所での生活を綴った短編小説を映画化した『鹹水雞的滋味』でした。
すでに7月1日の記事でもご紹介したように、制作スタッフは全て受刑者、俳優も受刑者と刑務官、制作は法務部矯正署台北監獄という異例の作品です。
もちろん監督は服役中ですので、台北監獄副典獄長代=刑務所の副所長がトロフィーを受け取りました。
授賞理由は「限られた機材、困難な環境での撮影にもかかわらず、素晴らしい作品を作り上げた」ということです。

0718tff10また、プレゼンターは豪華な面々が揃いましたが、印象に残っているのが編集賞と音楽賞の鄭有傑(チェン・ヨウジエ)と林書宇(トム・リン)両監督。同世代でお互いの作品を色々な形でサポートし合う仲の良さでも知られるこの二人の自己紹介が、
「2006年の長編映画賞受賞作『海巡尖兵』(林書宇監督作品)の主演俳優、鄭有傑です」
「2009年の審査員特別賞、主演女優賞、音楽賞、国際青年監督賞で観客賞を受賞した『陽陽』(鄭有傑監督作品)の助監督、林書宇です」
というもの。
笑いました。

0718tff14台北電影奨には初参加という『健忘村』の主演女優舒淇(スー・チー)は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督とともに監督賞を担当しましたが、初めてだけにほかのアワードとは少し違うシステムのため段取りを勘違いした姿がとてもキュートでした。
何をやってもスター、とはこのことでしょう。

そして、最後に今回の司会者は映画『太陽的孩子』の主演女優でシンガーソングライター、司会者と多才な阿洛.卡力亭.巴奇辣(アロ・カリティン・パチラル)が見事につとめたことをお伝えしておきます。

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※これまでの2017台北電影節に関する記事

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2017台北電影獎『大佛普拉斯』が大勝利!主演男女優賞に吳慷仁(ウー・カンレン)と尹馨(イン・シェン)!
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2017台北電影獎、アウト・オブ・コンペ「社會公義獎」を発表!『徐自強的練習題』と『白蟻-慾望謎網』の二作!
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2017/05/16
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2017台北電影節で林強(リン・チャン)特集「聽見電影的心跳:林強」が決定!
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2017年第19屆台北電影節の電影大使は吳慷仁(ウー・カンレン)と溫貞菱(ウェン・チェンリン)!
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