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2018/08/26

台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 第六回『52Hzのラヴソング』で、会場中がHappyに!

0826event18月26日に台湾文化センターで実施した台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 第六回、今回も満席のお客様に魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督の新作ミュージカル映画『52Hzのラヴソング』を楽しんでいただけ、解説や監督とプロデューサーの仕事についてのトークを興味深く聞いていただけました。

『52Hzのラヴソング』は2017年の旧正月映画として公開され、大阪アジアン映画祭で上映後、8月に台ワンダフルで記者会見とミニライブを行い、ここ台湾文化センターでトークイベントを実施、12月から一般公開となりました。

まだミュージカルというジャンルに馴染みがない台湾では、とても挑戦的な映画と言えます。これまでの魏徳聖作品のような爆発的なヒットにはなりませんでしたが、それでもこの年の第6位。同時公開された3本の旧正月映画の中で、一番長く上映され、「K歌場」というスクリーンをカラオケにしてみんなで歌うというイベント上映を10回ほど実施しました。
全ての回にローテーションを組んでキャストが参加し、音に合わせて文字の色が変わるカラオケ仕様の字幕で大合唱という魅力的な上映です。
最終日は、ほぼ全員のキャストと監督・スタッフも集結して大盛り上がり。チケットはもちろん秒殺でした。

0826event2この映画の制作が発表された時は、誰もが目と耳を疑いました。
魏德聖監督が音楽劇?
しかもラブストーリー?
『海角七号 君想う、国境の南』『セデック・バレ』、そして『KANO 1931 〜海の向こうの甲子園』という、歴史を題材にした映画をこれまで作って来たため、観客もメディアも大いにとまどったのです。
でも、『海角七号 君想う、国境の南』は町おこしのためにバンドを結成する音楽映画です。
そして『セデック・バレ』の素晴らしい音楽を思い起こして下さい。もちろん音楽を担当したのはプロの音楽家ですが、監督のコンセプトと思いを伝えて作られた曲の数々であることは間違いありません。
「僕は音楽には詳しくないから」といつも控えめに言う魏監督ですが、そのセンスの良さは疑う余地はありません。

0826event4タイトルに使われている「52Hz」は、世界で一番孤独なクジラが発する音の周波数のことです。ほかのクジラとは周波数が違うため仲間とコミュニケーションがとれず、たったひとりで大海を彷徨っているという事実から、監督はこのクジラに都会の孤独を象徴させました。
そんな人々に「決してひとりではない、I Love You!」というメッセージを贈りたいということで原題では「我愛你」と付けたそうです。
物語は、10年前から考えていた花屋の女の子とチョコレート店の男の子のラブストーリーをふくらませ、『KANO』の台湾公開後に脚本を仕上げました。
"孤独は物語の始まり"というロマンチックでハートウォーミングな作品「52Hz I Love You」は、こうして生まれました。

ここで、魏徳聖監督からのムービーメッセージを紹介。

0826event5本作では、メインキャストをバンドのリードボーカルで揃えました。
主役コンビは日本デビューも果たした人気バンド宇宙人のメインボーカル小玉(シャオユー)、もと綿花糖の小球(シャオチョウ)=荘鵑瑛(ジョン・ジェンイン)。
映画のモチーフとなっているクジラは、好きな人に想いを告げられない小安(シャオアン)、猫は恋に臆病な小心(シャオシン)に投影されています。
監督は小玉をキャスティングする時に、あまり有名でなく、そこそこのバントで歌がうまいボーカルが良いと言って、候補にあがった小玉の写真を監督がプロデュースするカフェのお客さんに見せたところほとんどの人が本名まで言えるとわかり、これだ!と思ったそうです。

0826event6バレンタインデーに別れとプロポーズという正反対の思惑を抱える二人は、『KANO 1931 海の向こうの甲子園』の主題歌も歌ったスミン、小男孩樂團の米非(ミッフィー)=陳美恵(チェン・メイフイ)が演じました。
スミンは、最初音楽だけ依頼したそうですが、出演したいと監督にアプローチして10キロ体重を落としてきたら考えると言われ、頑張ってダイエットした結果この大役を獲得しました。2007 年に短編映画『跳格子』に主演し金馬奨の最優秀新人賞を受賞していますから、演技面では問題ありません。
米非は、とにかく美人であることが監督の必須条件でしたが、ビジュアルはもちろん歌唱力も凄いです。
映画で歌うシーンは、ほとんどの場合あとでスタジオで歌だけ録音して映像と合わせるのですが、この映画では現場収録をしています。特に米非のバイクで歌いながら走るシーンは、すごい迫力です。これはBlu-rayの特典映像のメイキングに入っていますので、ぜひ見てみて下さい。

0826event7そして『セデック・バレ』で素晴らしい歌声を聞かせた林慶台(リン・チンタイ)とベテラン歌手の趙詠華(シンディ・チャオ)が大人のカップルでしっかりと脇を固めていました。
林慶台は、事前に「私を捜さないで」と言ってあったそうです。監督からのオファーは断れないので、最初から煙幕を張っていたそうですが、そうはいきません。これだけの歌唱力の人を監督が逃すわけはありません。「原住民の歌しか歌ったことないから」という林慶台に、ラブソングを歌わせてしまう監督、やはり凄いですね。
この年代の歌手で演技経験もあるきれいな人と言ったら趙詠華、監督の選択眼は美事です。

0826event8この物語で幸せを表現するカップルとしてキャスティングされたのは、李千娜(リー・チエンナ)と張榕容(チャン・ロンロン)です。監督は「台北に暮らす人々を描こうと思った時、同性カップルも当然」と愛と信頼にブレないふたりを設定、映画の中のこのふたりが婚礼衣装の店で歌う「鏡のふたり(原題:鏡子裡的你鏡子外的我)」は、鏡に映る相手と自分は同じ、あなたがいて私がいる、2人で1人…と愛し合うために生まれてきたふたりの讃歌です。
李千娜は歌手ですが、張榕容は主演作『光にふれる』のプレミアの時に張榕容の歌う姿を後でネットで見た監督は、「声がすごく良いから絶対にいけると思った。それに彼女のご主人(紀佳松)はミュージシャンだからきっとサポートするだろう(笑い)」と起用を決めたそうです。

0826event9小心の弟とその彼女を演じるのが、鄭暐達(チェン・ウェイダー)と孫睿(スン・ルイ)です。
鄭暐達は『若葉のころ』、孫睿は『KANO』に出演した若手俳優。可愛いカップルですね。
エンドロールの時に大安森林公園でデートしているカットが映りますが、この撮影の日はもともと河川敷で合同結婚式のシーンを撮る予定だったのですが、雨で中止になり、このシーンの撮影に変更になりました。

0826event10そして、特別出演は「海角バンド」として范逸臣(ファン・イーチェン)、馬念先(マー・ニエンシェン)、應蔚民(イン・ウェイミン)、民雄(ミンション)が演奏してくれますし、田中千絵、林曉培(シノ・リン)、麥子(マイズ)もラストのレストランのシーンで花を添えています。
魏ファミリーは、ほんとうに強い絆で結ばれていて、それがこの映画からも伝わって来ます。

0826event11音楽のクリエイターは、李正帆(リー・チェンファン)、李王若涵(ジェニファー・ジョン・リー)、作詞家の嚴云農(イエン・ユンノン)のチームを中心に、映画を綴る17曲の中には出演者のスミン、范逸臣、馬念先が提供した曲も含まれています。
李正帆は台湾ポッブスの祖である李宗盛(ジョナサン・リー)らと共にロックレコードの全盛時代を担い、特にアレンジャーとしての才能が評価され"編曲の天才"と称された人です。
その夫人である李王若涵は、作曲とメインキャストの歌唱指導を担当し、料理家でもあるので、厳しいレッスンの後にはみんなに美味しいご飯で元気を付けたそうです。

0826event12毎回、他の人が考えつかないようなアイデアで私たちを驚かせる監督のPR戦略ですが、本作では台湾公開前に海外巡映を実行しました。海外の映画祭への参加は常識ですが、公開前の一般に向けた大規模な先行上映など聞いたことがありません。
「『KANO』の時に北米を回って上映した時に海外在住の台湾の皆さんからとても大きな反響をもらった。『52Hz, I love you』のテーマは"愛と、孤独ではない"なので、故郷を離れている台湾人にまず見てもらい幸福感を届けたい」
ということで、2016年10月末からニューヨーク、ボストン、シアトル、シカゴ、ロスアンゼルス、トロントほか50都市を回りました。
もちろん各地の台湾人たちは大喜びで、監督に同行したメインキャスト4人はその反響に初めての感動を経験したと言っています。

0826event13この映画が他の映画と大きくちがうところが、もうひとつあります。
『海角七号 君想う、国境の南』『セデック・バレ』、『KANO 1931 〜海の向こうの甲子園』は、国内外の映画賞を数々獲得していますが、本作は映画祭のコンペティションへのエントリーはしなかったのです。
これまでの台湾の歴史を背景にした三作は"コクのあるメインディッシュ"で、『52Hzのラヴソング』は"甘いデザート"、映画を見た人が笑顔で心躍らせ幸せな気分で映画館を出て行ってほしいと願って作った作品だから、コンペティションで誰かと競う作品ではないと、映画祭側からの依頼を固辞しました。

0826event14この素敵なミュージカル映画、まだまだたくさんの見どころがあります。
「アジアンパラダイス」で、『52Hzのラヴソング』を(もっと)楽しむ7つのポイントというシリーズ記事を書きましたので、ご鑑賞のお役に立てれば幸いです。
また、本作には魏監督の息子さんも出演しています。どこに出ているかは…ぜひリリースされたばかりのBlu-rayとDVDでチェックして下さい。当時中学生というのがヒントです。
Blu-rayとDVDには劇場用のパンフレットの縮小版が封入され、Blu-rayには53分ものメイキングが特典映像に収録されています。

0826event15魏徳聖監督の次回作は、『臺灣三部曲』という、17世紀の大航海時代を舞台に、オランダ人、明朝の漢人、スペイン人、日本人,そして原住民が織りなす台湾誕生の序曲の物語です。
台南で撮影し、そこを台湾誕生の歴史と文化を体験出来るテーマパークにして、完成した映画はそこに作る劇場でしか見られないそうです。
完成予定は2024年、台湾誕生からちょうど400年に当たる年に監督からの誕生日プレゼントとして公開するということです。
このあたりの詳しい事は、アジアンパラダイスのインタビュー記事Podcastでお楽しみ下さい。

0826event16そして、監督とプロデューサーの仕事についてのトークです。
映画の製作チームは様々な部門に分かれていて、その全体を統括するのがエグゼクティブ・プロデューサー(監製)です。
企画から制作、宣伝まで映画製作の全てにおいて仕事は多岐にわたりますが、一番わかりやすく重要な役割が資金調達です。製作費を集めるために、公的な補助金を申請したり、一般企業からの協力を募ったり、金融機関に融資を頼んだりというたいへんな仕事です。
そしてその管理、スタッフやキャストの人事もあります。

その下にスケジュールや予算が予定内に行われているかをチェックし製作工程を調整・管理するラインプロデューサー(製片)、制作に関わるスタッフの統括を行うプロデューサー(製作人)、プロデューサー補として細かい部分をサポートするアソシエイト・プロデューサー(策劃)、映画の宣伝や広報を担当する宣伝プロデューサー(行銷總監)など、作品によっても多少違いますが、おおよそこのような役割で進められます。

監督は、映画制作の総指揮者としてすべての過程に関わり、撮影、照明、美術、音声などの全てのスタッフ、出演者を動かして映画を制作します。

0826event17魏徳聖監督は、『KANO』だけプロデューサーを担当しましたが、これは野球経験のある人の方が良いと思ったことから、自らアピールした馬志翔(マー・ジーシャン)に監督を託しました。
もともとプロデューサーとしては、魏徳聖監督とずうっと一緒に組んでいる黄志明(ホアン・ジーミン)がいましたが、2人でエグゼクティブ・プロデューサーをつとめました。
そして、先月監督に会った時にプロデューサーを経験してみての苦労についてお聞きしたことを、皆さんにお伝えしました。

0826event18湾ではプロデューサーを専門にする人と、魏監督のように時に監督もプロデューサーもこなす人がいます。
兼任する主な監督は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、張艾嘉(シルヴィア・チャン)、鍾孟宏(チョン・モンホン)、九把刀(ギデンズ)、葉天倫(イエ・ティエンルン)など。

プロデューサーを専門にする主な方々は、黄志明(ホアン・ジーミン)、葉如芬(イエ・ルーフェン)、劉蔚然(リウ・ウェイラン)、李烈(リー・リエ)、焦雄屏(ペギー・ジャオ)、柴智屏(アンジー・チャイ)、簡麗芬(ジエン・リーフェン)をご紹介しましたが、台湾では女性プロデューサーの活躍が目立ちます。

0826event19台湾現地の最新情報として、8/31に公開の『引爆點』。
台北電影節のクロージング作品でしたが、台風のため中止。公開が待たれています。
吳慷仁(ウー・カンレン)主演の社会派ミステリーで、先ごろ金馬奨のノミネートの第一段階を突破したと台湾メディアが伝えています。
『引爆點』
プロデュース:張艾嘉(シルヴィア・チャン)
監督:莊景燊(ジャン・ジンラー)、王莉雯(ワン・リーウェン)
出演:吳慷仁(ウー・カンレン)、尹馨(イン・シェン)、姚以緹(ヤオ・イーティー)、陳以文(チェン・イーウェン),徐詣帆(シュー・シーファン)

0826event20日本の最新情報は、『藍色夏恋』Blu-rayのリリース。
台湾の青春映画のレジェンド『藍色夏恋』のデジタルリマスター版Blu-rayが、8月31日にリリースです。
秘蔵メイキングや陳柏霖からのムービーメッセージ等を収録した特典DVDとの2枚組仕様で、日本語吹替も収録のほか、従来のソフトではカットされていた画面の端もノーカットで収められています。
『藍色夏恋』2枚組Blu-ray&DVD
監督・脚本:易智言(イー・ツーイエン)
出演:桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、陳柏霖(チェン・ボーリン)、梁又琳(リャン・ヨーリン)

0826event21抽選会では、『52Hzのラヴソング』のサントラCDとパンフレット(監督サイン入り含め)を、計8名の方にプレゼントしました。

次回は9月22日、台湾の伝統的な人形劇「布袋戲」をベースに、新キャラクターとオリジナルストーリーで創り上げた冒険ファンタジー『古代ロボットの秘密』 です。プロデューサー西本有里さんをゲストに作品解説、布袋戲の魅力、Q&Aも行います。
9月3日(月)昼12:00より申し込み受付です。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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