« 台湾映画『幸福城市』トロント国際映画祭に出品、石頭(Stone)が特別出演! | トップページ | 香港映画『黃金兄弟』の主題歌MV公開! »

2018/08/11

台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 第五回『停車』に高い満足度!

0811event1台湾文化センターで行った台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 第五回、鍾孟宏(チョン・モンホン)監督の『停車』は、満員のお客様にたいへん満足していただけました。
10年前の作品とは言え関東地方初お披露目とあって、今回も申し込みから数分で満員になった話題作です。

『停車』は、2008年にカンヌ映画祭「ある視点」部門で上映後金馬影展のオープニングを飾り国際評論家奨を受賞、2009年の台北電影奨では監督賞・脚本賞・新人賞を受賞しました。
2008年と言えば、台湾映画史の中でも重要な年です。どん底にあった台湾映画界を『海角七号 君想う国境の南』の登場で一転したことは周知の事実です。
でも、これ1本が台湾映画を救ったわけではありません。この年は、『九月に降る風』『Orzボーイズ』も健闘して底上げに貢献しました。それまでの映画人たちの試行錯誤、努力なくしてはこの復興はあり得なかったでしょう。

0811event2本作は興行的には震いませんでしたが、先述のように多くの受賞を果たしています。新しい才能がもたらした高いクォリティのエンターテインメントです。
主人公の張震が、気持ちのすれ違いで危機を迎えている妻、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)との関係を修復しようと、ケーキを買って家へ帰る途中、二重駐車で車を出せなくなってしまいます。邪魔になっている車の持ち主を捜しているうちに、様々なトラブルにあうという巻き込まれ映画。
偶然と必然のバランスがとても良い脚本で、きっちりとした構成の中、思わず声を出して笑ってしまうところもかなりありました。ひとクセもふたクセもある登場人物が織りなす人間模様が見事です。

0811event3監督の鍾孟宏は高校時代から映画が作りたくて台湾の大学を卒業後シカゴの大学院で映画製作を学んだものの、当時の台湾映画界はどん底だったため映画製作あきらめのCM道を進みました。CM界で実績を重ね、その一方でドキュメンタリーや短編映画を作っていました。2006年『醫生』で台北電影奨のドキュメンタリー賞を受賞、2008年の『停車』が長編劇映画の第一作になります。
この時は、『海角七号』で台湾映画が盛り返してきたので、じゃあ自分も撮ろうということで台湾人が祝日にどんなことをしているかを描きたくて二重駐車から起こるストーリーを考えたそうです。
このあと2010年の『4枚目の似顔絵(原題:第四張畫)』で金馬獎の監督賞を受賞、2013年『失魂』、2016年『ゴッド・スピード(原題:一路順風)』と次々に秀作を発表、中島長雄名義でカメラマンとしても多くの受賞実績はありますが、何故か興行成績に結びつきません。不思議です。
最近はプロデューサーとしても『大佛普拉斯』ほか若い監督をサポートしています。

0811event42009年に大阪アジアン映画祭で上映されるというので飛んでいき、監督にインタビューしました。
監督はCMでたくさんの俳優と仕事をしているので、その中からキャスティングをしたのかと思ったのですが、全員はじめてだというのが意外でした。
最初に決めたのが張震と杜汶澤(チャップマン・トー)だったそうです。
張震は目の不自由なお婆さんの家で息子に間違えられますが、実はその息子と二役にして息子の小馬のエピソードも撮ったそうですが、3時間を超える作品になってしまったので、その部分はバッサリとカットしたと言っていました。

0811event5張震の妻役を演じた桂綸鎂は、最初電話の声だけの出演という設定だったそうです。
でも、桂綸鎂が監督の撮ったCMを見たら大好きなCMばかりで、脚本も素晴らしいし、絶対出たい、声だけではなく、役者として出たいと直訴したと言っていました。2009年の台北電影節の時に話を聞いたのですが、実は、曾珮瑜(ペギー・ツェン)が演じた娼婦の役をやりたいと監督に言ったそうですが、監督から全然イメージが合わないと却下されたと残念がっていました。
でも、この映画については、今までの作品とは映像のスタイルが違い、撮っていて爽快だったと語っていました。

0811event6その娼婦を演じた曾珮瑜もその時一緒に話しを聞いていたのですが、「良かった、あやうく役をとられるところだった。イメージが合わなくて、良かった。私の方がイメージ合ってると思いますよ」と笑っていました。
そして、役作りのためまだスタッフが入っていないうちから、大陸で農村の人たちと1週間暮らして、なぜ家族の為や家のために出稼ぎに行ってだまされるか、その状況や心境がよくわかったと言っていました。
彼女はこれがスクリーンデビューで、台北電影奨の新人賞を獲得しました。
その後も映画やドラマにコンスタントに出演して、最近では『角頭2:王者再起』というヤクザ映画で主役の妻を演じていました。とても雰囲気のある女優さんで、演技の幅も広いので色々な役ができる方です。

0811event7鍾孟宏映画と言えば必ず出ている戴立忍(ダイ・リーレン)ですが、この『停車』では監督は最初高捷(ガオ・ジェ)が演じた理髪店の店主を予定していたそうです。
でも、戴立忍の演技の瞬発力を生かしたいと思い、女衒の役に変えたそうです。どんな役でも見事にこなす名優ですが、この映画でも本当に悪い奴でしたね。
この後のすべての鍾孟宏作品に出演していますが、どれも悪役で良い味を出しています。

0811event8戴立忍が女衒の役になったことでもとヤクザの理髪店店主を演じた高捷(ガオ・ジェ)、この方も台湾映画に欠かせない名バイプレーヤーで、クセのある役は絶品。
2008年の金馬奨の受賞式のパーティ会場で、あまりにこの映画がおもしろかったので声をかけてその事を伝えると「そうでしょ?だけど全然お客が入らないんだよ」とこぼしていました。その時はお嬢さんを連れていて、子煩悩なパパぶりと役柄のギャップに驚いた記憶があります。

0811event09そして杜汶澤(チャップマン・トー)、オーダーされたシャツを自分のサイズで仕上げてしまう訳ありテーラーの役は、監督が最初にキャスティングしただけあってはまり役でしたね。
鍾孟宏はこの後も香港の王羽(ジミー・ウォング)や許冠文(マイケル・ホイ)を起用していますが、そのさきがけとも言えるでしょう。
日本でも人気の杜汶澤、今年は大阪アジアン映画祭で大阪スターアワードを獲得し、今回の台北電影節では審査員を務めました。

台湾映画界の中でも異色の才能を放つ鍾孟宏作品、次回作が楽しみですが、いま準備中ということでこの上映にあわせてお会いする機会がなかったのが残念ですが、新作に期待したいと思います。

0811event92018台北電影獎は、最高賞の100万元大賞とアニメーション映画賞をダブル受賞したのは『幸福路上(邦題:オン ハピネス ロード)』。2013年に台北電影獎でアニメーション映画賞を受賞した12分の短編を長編化した作品です。
アメリカに渡って成功を収めた女性が祖母の死をきっかけにふるさと台湾の家族のもとへ戻り、子供の頃の懐かしい思い出とともに人生や家族の意味を考え始めるというストーリー。ヒロインの個人史とそこに散りばめられる台湾近代史の中で自分の幸せを探す等身大のヒロイン像が、とても素敵です。
このヒロインには宋欣穎(ツォン・シンイン)監督の実体験も反映されているそうで、アニメーションという手法を使いながらもそのリアリティーに心をつかまれます。
監督は「私はこの作品を、幸せを求めるすべての台湾人に捧げたいと思います」と語りました。


0811event10そして、『誰先愛上他的』が長編劇映画賞、主演男女優賞、メディア推薦賞、國際新導演競賽(国際新人監督コンペティション)の観客賞の五冠に輝き、大勝者となりました。
この映画はドラマの名脚本家徐譽庭(シュー・ユーティン)の初監督、邱澤(ロイ・チウ)が初の台客でゲイの役を演じることもあり、早くから話題になっていた作品でした。チケットは秒殺、上映後には観客賞のトップに踊りだし、長い間一位をキープしていました。
1人の男をめぐる妻と息子、そして不倫相手の男が繰り広げる物語ですが、さすがの徐譽庭、ストーリーの面白さは抜群でキャラクター設定やそれぞれの人物像の掘り下げ方は見事です。今回は脚本を他の人に委ねてはいるものの、100パーセント徐譽庭ワールド。修行時代に経験した舞台劇を巧妙に映画の中に取り込み、しかしその芸術性に偏ることなくアニメーションを使った笑いのポイントが娯楽性との絶妙なバランスをとっています。
メディア推薦賞を受賞しただけに、長編劇映画賞受賞の瞬間はプレスセンターが大いに沸きました。

0811event11台北電影獎では歴史的に強いドキュメンタリー部門ですが、今年は100万元大賞に届かなかったもののひまわり学運に身を投じた2人を記録した『我們的青春,在台灣』がドキュメンタリー映画賞を受賞し、観客からも強く支持されました。
1人はひまわり学運を牽引した台湾の陳為廷(チェン・ウェイティン)、もう1人は台湾が好きな中国からの留学生蔡博藝(ツァイ・ボーイ)で、それぞれの立場からこの運動を通しての自己の記録とともにあれから何が変わったのか、何が変わらなかったのか、心の軌跡を監督の傅榆(フー・ユー)が映像に刻みました。この映画の隠れたもう1人の主役でもある傅榆は、「信念を持ち続ければ、未来を変える可能性がある」と言っていました。

0811event12短編映画は、台湾では新人の監督や俳優の登竜門という役割も果たしているので毎年見逃せない部門です。受賞したのは『洞兩洞六』という軍隊の中のカリカチュアライズされた人間関係を、オリジナリティとユーモアで綴った野心的な一編。「映画秘宝」の愛読者から評価されそうなパワーがあります。
監督の王逸帆(ワン・イーファン)は台北芸術大学で学んでいますが、監督作品はこれが2作目。創作活動ではカメラマンとしての役割のほうが多いようです。

0811event13さて個人賞のほうですが、主演男優賞発表の瞬間、隣の徐譽庭監督と顔を見合わせ、震える唇、みるみる涙が満ちてくる邱澤の表情にテレビの前の多くの方がもらい泣きしたのではないでしょうか。
これまでドラマ中心に活躍してきて“新視聴率男”と呼ばれるほどの実績があるものの、ドラマアワードの金鐘獎ではノミネート止まりで受賞はしていません。
しかし『誰先愛上他的』ではこれまでのイメージや自身の殻を大きく破る役にチャレンジ、今まで見たことのない演技に驚かされました。美しいビジュアルに邪魔されがちな演技力の発芽を促したのも、徐譽庭ならではかもしれません。
受賞スピーチでは簡潔ではありながら心のこもった謝意を述べ「僕は本当に演技することが好きです」という言葉が強い印象を残しました。
アイドルから脱皮し、役者になったロイくんにプレスセンターでの囲み取材のあと「おめでとう!」と声をかけると「ありがとう、日本のみんなに伝えてね」と、言っていました。

0811event14舞台の大スター謝盈萱(シェ・インシュアン)は、意外なことに初の主演女優賞を映画で受賞という結果になりました。
夫を奪われた上に保険金までとられ、怒りと悲しみで相手の男の所へ乗り込んでいくエキセントリックな妻という役柄を、見るものに不快感なくパワフルにそして時に繊細にみせる演技に圧倒されました。この主演女優賞に異論を唱える人はいないのではないでしょうか。それぐらいの素晴らしさです。
「私は舞台の人間ですが、今は映画も大好きになりました」と、とても嬉しそうでした。

0811event15監督賞を受賞したのは、オープニングを飾った『范保德』の蕭雅全(シャオ・ヤーチュエン)。前作『第36個故事(邦題:台北カフェストーリー)』から8年ぶりの新作で、自身の体験から主人公と父と息子という3世代の関係と絆を描いた作品です。今回は美術賞と音楽賞も獲得しましたが、その作家性の強さから監督署は納得の受賞です。
「この映画に出てくれた俳優たちは、すべて私の最優秀男優賞であり最優秀女優賞です」と、出演者たちをねぎらっていました。

0811event16脚本賞は『血觀音』の楊雅喆(ヤン・ヤージャ)監督が獲得しました。
三代の女性の闇の部分を含めて精密に描き出した筆力と、複雑な人間関係の構築が評価されました。
金馬賞では作品賞、主演女優賞、助演女優賞を受賞していますが、監督個人の賞はこれが初めてとあって、この脚本賞獲得をとても喜んでいました。

0811event17撮影賞は中島長雄、鍾孟宏監督のカメラマンネームですね。
昨年黃信堯(ホアン・シンヤオ)監督の『大佛普拉斯』をプロデュースして台北電影奨や金馬奨で数々のトロフィー獲得に導いた鍾孟宏が、今年も素晴らしい新人監督黃榮昇(ホアン・ロンシェン)を世に出しました。
『小美』はベルリン国際映画祭での上映、香港電影節のオープニングに続き、台北電影節では台北電影獎と國際新導演競賽にダブルノミネートされ増したが、受賞は撮影賞のみでした。
台東から台北に働きに出てきた少女《小美》が突然姿を消し、彼女と接点のあった大家、義理の兄、職場のオーナー、元カレ、現在の恋人、面接を受けた会社の担当者、母親、カメラマン、霊媒師という9人がそれぞれ証言する形で小美の輪郭が徐々に浮かび上がるという斬新な作品です。
鍾孟宏テイストもたっぷりですが、そこに新人監督の作家性がきちんと生かされていて絶妙のバランス。これもまたプロデューサーの手腕と言えるでしょう。

0811event18助演男優賞の鄭人碩(チェン・レンシュオ)は、『角頭2:王者再起』が対象作品。本作は黒社会の人間模様を描いた台湾では珍しいやくざ映画ですが、自分のポジションを的確に把握した役の個性の表現力と、高い潜在能力が評価されました。
2015年にも『醉·生夢死』で同賞をを獲得していますが、以来多くの作品に出演し新しいバイプレーヤーとして活躍中です。
今回の受賞は「息子の最高の誕生日プレゼントになった」と大喜び。カメラマンからのリクエストに答え、何度もジャンプしていました。

0811event19助演女優賞は『血觀音』の文淇(ウェン・チー)でしたが欠席のため楊雅喆監督が代わりにトロフィーを受け取りました。。新人賞には『阿莉芙』の舞炯恩(ウージョンアン)が選ばれましたが、こちらも宜蘭でのライブのため来られなかったのが残念です。代理受賞は、相手役のかっこいい女優趙逸嵐(チャオ・イーラン)でした。

0811event27この他、司会者、プレゼンターのご紹介、台北電影節てのトピックスの後、最新情報のコーナーです。
台湾では、今年後半に今日お伝えした台北電影節でお披露目された新作を含め15本もの映画が公開予定です。
その中から8月17日に台湾で公開になる『鬥魚 アウトサイダー』をご紹介しました。
これは14年前に大ヒットしたドラマの映画化で、郭品超(ディラン・クォ)と藍正龍(ラン・ジェンロン)そして安以軒(アン・アン)が繰り広げる愛と友情の青春ストーリーを、新世代のキャストが演じます。

0811event28日本では、9月14日から23日まで開催される「アジアフォーカス・福岡国際映画祭 2018」で『大仏+』と、さきほどご紹介した『小美』が上映されます。
福岡が『小美』を獲得したということは、台北電影節で上映されたこれ以外でどの作品が東京国際映画祭での上映の可能性があるのか…楽しみです。

0811event29抽選会では、『停車』の英語、台北電影節のパンフレット、台北電影節オリジナルバッグを、計8名の方にプレゼントしました。

次回は8月26日に、まだ全国で公開中の魏徳聖(ウェイ・ダーシェン)監督作品『52Hzのラヴソング』の上映と、監督とプロデューサーの仕事についてのトーク。すでに申し込みは終了していますが、9月の『古代ロボットの秘密』 は再来週くらいにご案内します。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

|

« 台湾映画『幸福城市』トロント国際映画祭に出品、石頭(Stone)が特別出演! | トップページ | 香港映画『黃金兄弟』の主題歌MV公開! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 台湾映画『幸福城市』トロント国際映画祭に出品、石頭(Stone)が特別出演! | トップページ | 香港映画『黃金兄弟』の主題歌MV公開! »