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2018/10/30

東京国際映画祭 香港映画『三人の夫』陳果(フルーツ・チャン)監督シンポジウム

1030sanfu1東京国際映画祭コンペティション部門で上映された香港映画『三人の夫(原題:三夫)』で、陳果(フルーツ・チャン)監督が主演の曾美慧孜(クロエ・マーヤン)、共同脚本の林(ラム・キートー )と共にQ&Aを行いました。
2回目の上映(10月28日)は時間を拡大してのシンポジウムが行われ、活発な質疑応答が展開しました。

1030sanfu2本作は、陳果監督の『ドリアン・ドリアン(原題:榴槤飄飄)』『ハリウッド★ホンコン(原題:香港有個荷里活)』に続く“娼婦三部作”の三作目。
大阪アジアン映画祭で来日した時に、香港返還から20年の現在の状況や本作についても少しお聞きしましたが、香港の変遷を様々な角度から一貫して描いてきた監督の新作は、想像以上のインパクトを持った作品です。
脚本のラム・キートーは「ぜひ前二作を見て欲しい。監督は女性の本能的な部分、また三人の夫それぞれが色即是空の“空”であることなどから何を語ろうとしているのかが見えて来る。」と言ったのですが、監督は「そんなに深い意味はない、単にある女性が三人の夫とどう生きていくのかを描いているだけ」と返していました。

1030sanfu3しかし、監督の作品作りはそんなに単純であるわけがありません。
三人の夫だけでなく、何者にもコントロールできないヒロインの姿をどのような隠喩として受け止めるか。終盤、行き先を求めて船を進めるところからモノクロのシーンになり、船首に立つヒロインのまとうマントのような服だけ深紅になっている映像に何を感じるか。
監督から委ねられたものを、観客それぞれが考えさせられます。

1030sanfu4発達障害で人並みはずれた性欲の持ち主のヒロインを演じる曾美慧孜は素晴らしい熱演で、金馬奨の主演女優賞にノミネートされています。
監督から要求されて10数キロも体重を増やし、ビジュアル面からの肉感的なヒロイン像作りに加え、目、声などの表現にも圧倒されます。観客からこのような表現について聞かれ、「魚はどういう風な目をしているのか観察し、演技の多くは目が魚に似ているようにしました。気がふれたシーンは監督の指導によるものです。中国には色々な神がいますが、この役は人間と獣が融合した神獣だと思います。神獣としてのセックスは、ある種の解脱だと思います。彼女はセックスを通して開放されたのだと思い、そうのように演じました」と、答えていました。

婁燁(ロウ・イエ)監督に発掘されて『天安門恋人達(原題:頤和園)』でデビューし、最新作は新鋭の畢贛(ビー・ガン)監督の『地球最後的夜晚』というアート系の監督との仕事も多い曾美慧孜、金馬奨の結果を含めこれからがとても楽しみな女優です。

そういえば、今村昌平監督の『神々の深き欲望』でも沖山秀子が演じたヒロインは発達障害のセックス依存症という設定でした。
神と生と性…人の営みの究極というか、根源にあるものは普遍的です。
本作は全体の7割くらいを占めるセックスシーンなどのため中国では公開されないと監督が言っていますが、香港では表現について問題はなく11月25日から公開になります。

このシンポジウムは、後日Podcastで配信します。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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