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2018/11/27

「台湾原住民の文化と音楽を探る~金曲奨で最優秀アルバム賞を受賞した桑布伊(サンプーイ)を迎えて」トーク&ライヴイベントレポート!

1127sanbuyi110月25日に東京・虎ノ門の台湾文化センターで行われた、台湾原住民音楽アーティストの桑布伊(サンプーイ)を迎えたトーク&ライヴイベント「台湾原住民の文化と音楽を探る~金曲奨で最優秀アルバム賞を受賞した サンプーイ(桑布伊)を迎えて」のオフィシャル・レポートが届きました。

当日は、司会進行を務める音楽評論家の関谷元子さんのナビゲートによる普段なかなか知ることができない台湾原住民の文化や音楽についてのとても興味深い桑布伊のトークと圧巻のライブで参加者を魅了しました。
桑布伊の地元の祭事などの模様が映像で紹介されたあと、民族衣装を纏った桑布伊が登場。まずは彼の部族の古い曲「慶豊収」を1曲披露して、広大な大地と空に響きわたるような力強く伸びやかな歌声にさっそく圧倒されます。

1127sanbuyi2台湾原住民は台湾全体の人口の約2%で、現在16の部族が政府に認定されています。日本では「プユマ族出身」と紹介される桑布伊ですが、彼いわく、実は日本で呼ばれているプユマ族という名の括りは間違いで、ピヌユマヤン(Pinuyumayan/卑南族)というのが正しいとのこと。
ピヌユマヤンはおよそ1万数千人とされ、その中でさらに10の部族に細分化されています。プユマ族とはその中の一部族で、桑布伊の出身はプユマ族ではなく、ピヌユマヤンの中の約1500人ほどのカタティプ(katratripulr/卡大地布)という部族の出身であると念を押しました。
カタティプは台東県の温泉地としても有名な知本にあり、平原で暮らしてきました。ちなみに、桑布伊もお風呂が大好きなのだとか。

彼の家族は農業を営んでいて、マンゴー、グアバ、パイナップルなどのフルーツ、野菜の各種や米など10種類以上もの農産物を生産している。土地の養分が豊富なので、何でもよく育つそうです。
そして、カタティプは月に一度は祭事を行ないます。年齢などによって階級制度があり、いろいろな任務があるということです。男児は10歳から家を出て、男子会所という女人禁制の集会所に入り、部族を守るための訓練が始まるのだそう。

アミ族、ルカイ族、パイワン族と他の大きな部族に囲まれているカタティプは、元々の暮らしからスペイン、オランダ、日本の統治を経て現在に至るまでに、自分たちの土地と文化を守り歴史を受け継ぐのに苦労してきたそうです。桑布伊は「カタティプであることを誇りに思っている」と力強く語りました。

1127sanbuyi5この日の彼の衣装はカタティプの成人男性の衣装で、母の手作りだそうです。ポシェットのような肩掛けの小ぶりな袋にはタバコなどの小物を入れ、アクセサリーは昔の日本円の硬貨があしらわれたもの。彼らが身につけるアクセサリーの全ては祖先や長老から受け継いだもので身分や階級を表し、冠婚葬祭をはじめ部族の団結を示すときに正装するのだそうです。
10歳から生涯、その時々の違った衣装を身につけていき、服を見ただけで婚姻状況などの個人情報までがわかるようになっているとか。たとえば、露出が多いのは未婚の女性で、とくに手の美しさをアピールするため腕を出し、背中につける飾り物は、好きな男性ができたときに相手に贈るものだそうです。

カタティプは母系社会なため、男性は、女性へのアプローチやアピールがあまり積極的ではなく、結婚する際にも男性が女性の家に入るのだとか。そして、カタティプは花が大好きで、祭事には生花の冠や飾りもので盛装するそうです。

続いて話題は桑布伊の音楽活動へ。桑布伊は第28回金曲奨で2ndアルバム『Yaangad 椏幹』(2016)が7部門にノミネートされ、この年の全てのアルバムの頂点に立つ最優秀アルバム賞をはじめ、最優秀原住民語歌手賞、最優秀演唱類録音アルバム賞を見事トリプル受賞しました。
「原住民の音楽は主流ではないので、大きな賞はなかなかとれるものではありません。ほかの歌手には大きなスポンサーがついていますが、私の場合は何もなくて本当に大変。でも、この経験からわかったのは、スポンサーがなくても、心をこめて自分の好きな音楽を作って頑張っていれば認めてもらえるということ。審査員に感謝しています。さらに嬉しいことにこの受賞のあと、アメリカの音楽賞(The 60th Global Music Awards/今年4月開催)でもGold Medal 賞を受賞しました」。

そのアルバム『Yaangad 椏幹』は、原住民音楽とはいえ、桑布伊が全曲の作曲とほとんどの作詞を手がけた彼のオリジナルの音楽と言えます。
「アルバムは全て母語で歌い、環境と人間と宇宙の関係を表現しています。一番重要なのは、このアルバムによって部族の言葉を次世代に残していくこともできるし、先祖から受け継いだ文化や歴史を多くの人と共有できること。そして、アルバムは全てオリジナル曲です。実験的にいろいろなアレンジを試したので全曲違った曲調で、多様性を感じることができると思います」。

では、ピヌユマヤンやカタティプの音楽とはどんなものなのでしょうか。祭りのときだけ歌う音楽もあれば生活の中で歌われる音楽もあり、祭りの歌は適当に歌ってはならず決まった形で歌うのだそうです。
また、音楽にも階級制度があり、男性の曲、女性の曲、70歳以上の人が歌う歌などいろいろあります。たとえば、70歳以上の人が歌う歌は、古い言葉で部族の歴史の物語が歌われ、70歳になるまで歌ってはいけないとか。桑布伊も70歳になってその歌が歌えるときを楽しみにしていると言っていました。

桑布伊はいま、若者たちが部族の言葉を忘れてしまうことを危惧しています。「実際、うちの言葉は消えそうな言葉として政府に認定されていて、40歳以下の多くの人は話せなくなっているのが現実です。幸い私は小さい頃から祖父母のそばで言葉を教えてもらいました。いま母語を継承する仕事もしているので、母語で曲を作ったり部族の若者に教えたりしています」。

彼らの部族には文字がなく、歌を歌い継ぐことで文化や歴史を継承してきたといいます。テレビやラジオがない時代には、家族で部族の歌を歌って音楽を次の世代に継承していく生活だったそう。日常生活の中で喜びや悲しみなどの感情を音楽で表すこともあり、魚が生きるために水が必要不可欠なように、彼らにとって音楽はなくてはならない重要なものだそうです。

現在、台北と台東を半々くらいで暮らしているという彼は、東京にくるのは今回で3回目。前回は9月に上野公園で行なわれた大規模な台湾のカルチャーイベント「Taiwan Plus 2018 文化台湾」のステージでライブを行ないました。
「東京が大好きです。東京はタワーマンションや大きなビルがたくさんある中に、小さい神社とか日本らしいものがあって、思ったよりも慌ただしくないと思います。東京に来たら、朝起きてGoogleマップを見て街を歩くのが好きです。台北は街の騒音がうるさいけど、東京は全然うるさくないですね。でも台北と歩く方向が違って台北は右側通行、東京は左側通行だから、よく人にぶつかります(笑)。日本人の友だちのことも大好きです」。

1127sanbuyi3そして、ライブの前に、桑布伊が持参した台湾原住民の伝統楽器の口琴と鼻笛が紹介されました。口琴は伝統楽器でありながら、奏でるとまるで電子音楽の音のよう。一方、2本の笛を鼻息で吹く鼻笛は、2つの違った音色とメロディが同時に出せて神聖な響きです。祖先が遺した1000年以上の歴史があり、亡き人への哀悼を表したり鎮魂したり死で悲しむ人を慰めたりするときに使と言っていました。

いよいよお待ちかねの桑布伊のライブへ。部族の古い歌や彼が信じる創作の神様に捧げる曲を熱唱。続けて、母の日なのに家に帰れなかったときに作ったという、母の目は星や月のようにきれいで空から私たちを見守ってくれるということを歌った歌では、サビをみんなで合唱しました。最後に部族の集まりで必ず歌うという歓迎の歌であり、自分自身への励ましでもあり人々への祝福でもある歌を歌ってくれました。

さらに観客からの質問にも答えた桑布伊は、質問者に自身のCDや花の冠をプレゼントして、最後の挨拶をしました。
「台湾はとてもきれいなところです。山も海もあって人も優しく、毎月いろんなイベントをやっているのでいつ遊びに来ても大丈夫。大歓迎です。私も次に日本に来るときは、自分のバンドと一緒に来てフルライブをやりたいです」。

1127sanbuyi4桑布伊はこの翌日に、2020年東京オリンピックで台湾選手を受け入れる、台湾のホストタウンとなる茨城県の笠間市にてイベントやライブを行ない、地元の人々とも交流しました。
来年4月12日には台湾で政府が主催するライブを行なう予定だそうなので、日本でも桑布伊のフルライブが見れることをぜひ楽しみにしたいですね。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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