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2019/09/21

台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 〜オリジナリティと未来へ向けて『大仏+(原題:大佛普拉斯)』に大喝采!

0921dm 9月21日に行いました台湾映画上映&トークイベント〜台湾映画の"いま" 〜オリジナリティと未来へ向けて第7回は、台湾の格差社会を独特のブラックユーモアで描いた未公開作品『大仏+(原題:大佛普拉斯)』。
一昨年東京国際映画祭で上映されましたが、チケットが買えずに見逃した方、もう一度見たいと参加された方など大きな期待を持って来場された観客の皆さんから、「評判通りのおもしろさ」「モノクロとカラーの色づかいが印象的」など高い評価をいただきました。
トークは、作品解説と台湾映画が日本で公開されるまでの道筋をお伝えし、こちらもとても興味深かったと満足していただけたようです。

0921event1 『大仏+(原題:大佛普拉斯)』は2015年の台北電影節で上映された黃信堯(ホアン・シンヤオ)監督の短編『大佛』を、当時の審査員だった鍾孟宏(チョン・モンホン)監督が気に入り、自らプロデューサーを買って出て長編化されたものです。
短編の時には3人だった登場人物を、その3人の周りに色々な人を加えることでメインの3人をより立体的に浮かび上がるようにしたそうです。
その加えられた人物像、例えばコンビニの店員や「釈迦」と呼ばれる不思議な男、政治家など社会の構造を象徴するようなキャラクターでありながら、それぞれが個性的でとてもおもしろい役柄になっています。
2017年に台北電影節でお披露目して、100万元大賞ほか長編劇映画賞、編集賞、音楽賞、美術デザイン賞の5部門を制し、金馬奨では新人監督賞、撮影賞、脚色賞、最優秀オリジナル音楽賞、最優秀オリジナル楽曲賞の5冠を獲得しました。
それだけでなく、興行収入でもこの年の10位にランク・イン。プロデューサーの鍾孟宏監督は、自身の作品全て合わせたより高い興行成績だと驚いていました。

0921event2 黃信堯監督にとって本作は、初の長編劇映画です。
もともとドキュメンタリー映画監督として2000年にデビュー、2011年の台北電影節で『沈ㄕㄣˇ沒ㄇㄟˊ之島』が100万元大賞とドキュメンタリー映画賞を受賞しています。
10年後に長編劇映画でまた100万元大賞、金馬奨では新人監督賞と脚色賞を獲得するという、すごい監督と言えるでしょう。

0921event3 本作は現実の部分がモノクロで、ドライブレコーダーの映像がカラーという構成がユニークですが、これについて黃信堯監督は、東京国際映画祭のQ&Aでこの様に語っていました。
「もとになった短編の時は資金がないので、社会の底辺に生きる人の視点で見る現実の世界を白黒にし、金持ちの車のドライブレコーダーの映像をカラーで表現しました。これが僕のスタイルとして成功したので、長編の時は資金はありましたが、あえてこの僕のスタイルでいきたいと希望したところプロデューサーも承諾してくれました」

0921event4 そして、ナレーションが監督自身で、スタッフから登場人物、音楽などをはじめ様々な解説が語られていきます。この語り口が独特で、ユーモアもたっぷり盛り込まれた実におもしろい趣向になっています。
なぜ 監督自身がナレーターなのかというと、低予算のドキュメンタリー映画からスタートした監督は、ナレーションが必要な時は自分でやっていたから。でも、それが自分のスタイルのひとつになったと言っていました。
ただ、スタジオで収録したものより、監督が家でいわば練習にように録音したナレーションの方が良いと言われ、そちらを使ったということです。

0921event5 スタイルと言えば、タイトルやクレジットはプロデューサーである鍾孟宏監督作品のスタイルそのものです。撮影も中島長雄名義で鍾孟宏が担当しているので、これはかなり鍾孟宏色が強いのでは…と思い、監督に聞いてみました。
この長編化プロジェクトが進んでいた2015年に、黃信堯監督は鍾孟宏監督の『ゴッドスピード(原題:一路順風)』のスタッフとして製作に参加していて、色々一緒に仕事をする中で、撮影は中島長雄さんにお願いしようと思ったそうです。そして、それはこれまで何度も撮影賞を受賞している名カメラマンに全てお任せするということ、だそうです。

0921event6キャストについて、監督はドキュメンタリー出身のためあまり俳優を知らず、唯一縁のあったのが陳竹昇(チェン・ジューシェン)ということで主役にしたそうです。もう1人は莊益增(ジュアン・イーゼン)、この主役ふたりは短編と同じキャストです。
陳竹昇は、15歳の時から舞台の裏方をつとめ、たまたま俳優が不足していたことから借り出され、以降も俳優だけでなくプロデューサーや美術デザイン、演技指導など表裏両方で活躍しています。
『大佛普拉斯』が公開された2017年は、『阿莉芙(邦題:アリフ・ザ・プリン(セ)ス)』でドラック・クイーン・パブのママ役が出色の演技で、金馬奨の助演男優賞を受賞しました。
莊益增はもともと監督や撮影ほかクリエイターで、2005年の監督作『無米樂』というドキュメンタリーが有名です。

0921event7 社長役は、長編化にあたり鍾孟宏監督から戴立忍(ダイ・リーレン)しかいないと推薦され、黃信堯監督も賛成して決まったそうです。
台湾を代表する俳優の戴立忍ですが、鍾孟宏監督作品では全て悪役を演じています。こんなイケメンにことごとく悪役をやらせる鍾孟宏監督のセンスは抜群です。『停車』や『ゴッドスピード(原題:一路順風)』のような根っからのワル、『四枚目の似顔絵(原題:第四張的画)』『失魂』で見せる得体の知れない悪の顔、そして本作では偽善者の仮面をかぶった悪い奴と、様々な悪役で楽しませてくれます。
しかも、本作でのズラ芝居は圧巻!ほかに誰ができるでしょうか。

0921event8監督は、『ゴッドスピード(原題:一路順風)』の製作時に、この出演俳優たちに自分の作品にも出てもらおうと思っていたと言っていました。
林美秀(リン・メイショウ)は、その作品数の多さ、豊かな個性の役柄、演技力で台湾映画・ドラマになくなてならない名女優です。
『運轉手之戀』などの監督陳以文(チェン・イーウェン)は俳優としても名バイプレーヤーで、林美秀との「阿彌陀佛」のやりとりが笑わせてくれます。
お笑いタレントの納豆(ナードゥ)は鍾孟宏監督に俳優として見出され、『ゴッドスピード(原題:一路順風)』では金馬奨の助演男優賞にノミネートされました。
張少懷(チャン・シャオファイ)は台湾の名司会者を父に持つ二世俳優ですが、独特のキャラで多くの監督からオファーされ、主演映画もあります。

0921event9監督の素敵なナレーションでも紹介されていた音楽は、台北電影節では音楽賞、金馬奨では最優秀オリジナル音楽賞、最優秀オリジナル楽曲賞を獲得しています。
担当したのは、客家のシンガーソングライター林生祥(リン・シェンシャン)、本作のサントラは彼が率いる生祥樂隊の日本人ベーシストの早川徹が作曲した2曲、ギタリストの大竹研が編曲に、ドラマーの福島紀明が参加しています。
この日本人メンバーは2014年からジャズトリオ「東京中央線」の活動もしていて、今年の金曲奨では「Lines & Stains」がインスト部門の最優秀アルバム賞を受賞しています。
劇中の酒池肉林のシーンで歌っているのは、シンガーソングライターの朱頭皮(チュートウピー) 。台湾文化センターの音楽イベントにも出演したことがあります。

0921event10さて、本日のトークテーマ「台湾映画があなたに届くまで」と題して、台湾映画がどのように日本で一般公開されるのか、その道筋をお伝えしました。
写真は、これから年末までに日本で公開される台湾映画です。3ヶ月で5本の公開というのは珍しいことです。
映画祭やこのイベント上映では限られた地域の一部の方しかなかなか見る機会がありませんが、一般公開になれば多くの皆さんに見てもらえるチャンスがあります。
ハリウッド映画と違い、アジア映画、特に台湾映画の公開への道のりはたいへん厳しいものがあります。まず、台湾映画を買い付けて配給する会社が少ない。そして、かけてくれる映画館も少ないというのが現状です。そんな中で、努力して台湾映画公開に向けて頑張って下さる会社は、本当にありがたいですね。

0921event11まず、配給会社がどうやって作品を探すのか。
1. マーケット
  アジア映画を扱うマーケットとしては、4月の香港フィルマート、5月のカンヌ国際映画祭、6月の上海国際映画祭、10月の東京国際映画祭、11月のアメリカンフィルムマーケットが有名です。このマーケット=映画の見本市で商談が行われ、各国の映画が売り買いされます。
10月の釜山国際映画祭と11月の台湾の金馬影展は、完成した作品ではなく、企画段階で投資を募るマーケットが行われています。

0921event122. 映画祭
  近年は不況の影響もあり、特に台湾映画を配給する会社は小規模で海外のマーケットに行く予算もままならないため、マーケットを併設しない国内の映画祭、東京フィルメックスや大阪アジアン映画祭で上映される映画をチェックして、買い付けの参考とするところもあります。

0921event133. 単独リサーチ
  かつて買い付けた台湾の会社が「こんな新作がありますよ」と情報提供してくれたり、逆に日本サイドから「何かありませんか?」と聞いたりする事も行われています。時々、私のようなコーディネーターがお役に立つこともあります。このイベント上映を見に来て公開に繋がった『藍色夏恋』のデジタルリマスターによるリバイバル公開、5月に見て気に入っていただき、11月に公開が決まった『あなたを、想う。(原題:念念)』といううれしい成果もあります。

0921event14映画を買い付けたら、まず劇場営業という作業があります。映画を買ってもかけてくれる映画館がなければ何も始まりません。
台湾映画は『KANO』は例外として大手シネコンでの公開は難しく、都内ではほぼ単館になります。
最近は、新宿の武蔵野館、K'sシネマ、シネマカリテ、渋谷のユーロスペース、シアター・イメージフォーラム、吉祥寺のアップリンクが主なところで、そこから全国の映画館に営業して順次公開という形を作っていきます。
評判が良ければ、劇場からのオファーで拡大していくこともあります。この良い例が『セデック・バレ』です。当初は内容が抗日事件ということで様子見をしていた地方の映画館が、作品の高評価で最終的に全国で50館くらいで公開されました。

0921event15劇場営業と並行して行われるのが、邦題をつけたりポスタービジュアルの製作です。
中国語タイトルではなかなか内容が伝わらないので、配給会社が知恵を絞って邦題を考えます。『星空』などはそのままでも大丈夫なので、稀少な例です。
台湾の映画会社は、海外セールスに向けてほとんど英語のタイトルを付けていますので、これを参考にしたり日本語訳そのままというのもあり。
チームで話し合って決めるのですが、なかなかたいへんです。
また、台湾と日本ではデザインセンスも違うため、日本版のポスタービジュアルを考えて製作します。

0921event16劇場が決まり邦題も付いたら、次は宣伝です。
テレビにCMを流すという予算はアジア映画にはありませんから、広告費はポスターやチラシを作るなど最小限にして、パブリシティというメディアで取り上げてもらうというお金のかからない方法がメインになります。
デレビやラジオ、雑誌、新聞、Webメディアなどでいかに取り上げてもらうか、宣伝担当は智恵と努力の勝負になります。

0921event17まずは映画を見てもらわないと始まらないので、マスコミ向けの試写会を実施し、アジア映画や台湾映画に興味を持ってくれるメディアに働きかけます。
そして、監督や俳優への取材を組むことも必須となってきます。招聘するにあたり、俳優は費用がかかるので、監督を呼ぶことが多くなります。作品のことを一番わかっているのは監督なので、この点でも効果的です。以前は記者会見+個別取材というパターンでしたが、記者会見では他社と同じ記事の内容になるのでメディアはあまりそれを望まないため、アジア映画の場合はいまは記者会見は行わず、1〜2日の個別取材を組むことが多くなりました。

0921event18そして最近は配給会社自身が情報発信していくため、公式サイトを作り、TwitterやFacebookなどのSNSで情報を即時発信していきます。SNSの場合、どれだけ発信できるネタを持っているかというのも重要になります。
さらに、そのネタをいつ、何を出していくかという効果的かつ戦略的な計画が必要になります。
日本はまだ公式サイトを作っていますが、台湾はSNSだけです。Facebookなどだけで全ての情報を出していくので、更新の頻度は半端ないです。ちなみに、台湾は生活習慣やメディアのシステムも違うので、根本的に宣伝の方法が異なります。

0921event19こうして、ようやく私たちが映画館で台湾映画を見られるようになるのですが、ご説明した流れでご理解いただけたと思います。
では、どんな映画が買い付けられるのか。
ポイントとして、興行成績、監督の知名度、出演俳優の人気、話題性など様々ですが、一番大事なのは多くの人が見に来てくれるかどうか、ということです。
その為に色々考えて決断をし、その映画を知ってもらうために宣伝戦略を練るわけです。
会社にとって、黒字にならなければ次の機会は難しくなってしまいます。
でも、何が当たるかは、誰もが知りたいけれど、誰もわからない。
この答えは永遠の謎です。

0921event20そして、どうしてあの作品が公開されないのだろう、映画祭ではチケット秒殺だったのに…と思う事、皆さんおありではないでしょうか。
先述の映画を選ぶポイントで考えるのは“人”です。
興味や嗜好の方向によって、判断も人それぞれです。ある人には響いても、別の人にはそれが届かなかったり…。
台湾映画の場合、誰かの熱い思いが重要になることがあります。“この映画を日本の多くの人に見てもらいたい”と強く思えば説得力もあり他の人を動かすことも可能です。
観客としてそのアクションは、映画館へ向けましょう。
映画館は、配給会社の“思い”に動かされて上映を決めます。そしてもう一方の観客からのリクエストも、大事なことだと思います。劇場にかけてもお客さんが来なければ意味がありません。その観客が見たい作品を知りたいはずです。
もし、台湾や飛行機の中で、また映画祭で見て気に入ったならば、映画館にリクエストしてみてはいかがでしょうか。
この場合、大手シネコンではなく台湾映画をよく上映している映画館を選んで下さい。
もっともっと台湾映画が公開されるように、みんなで、声をあげていきましょう。

0921event21最新情報です。
台湾では、10月18日から邱澤(ロイ・チウ)主演のブラック・コメディ『江湖無難事』が公開になります。
映画製作の夢を持つチンピラが、ボスから愛人を主演させることを条件に映画を撮ることになるのだが、とんでもないことが起こり…というストーリー。
ヒロインは『Mr.Long』や『引爆點』の姚以緹(ヤオ・イーティ)、黒社会の面々も豪華な顔ぶれで、昨年高炳權(ガオ・ピンチャン)監督に話を聞いた時からとても楽しみにしている作品です。

0921event22日本では、来週9月28日から新宿K's cinemaで『バオバオ フツウの家族』が始まります。
二組の同性カップルが子供を持ちたいという願望から展開するヒューマン・ストーリーです。5月にこのイベントの為来日してくれた台湾で活躍する俳優で脚本家の蔭山征彦さんがメインキャストの1人をつとめていますが、28日の初日には舞台挨拶の為再来日します。
先日ドラマアワード金鐘奨で、助演男優賞にノミネートされて話題になっています。
12:10の回終了後に登壇しますので、ぜひ足を運んで下さい。
K's cinemaは予約ができません。前売り券をお持ちの方も、当日整理券と引き換える必要があります。

0921event23恒例の抽選会では、海外のマーケットで使われた『大仏+(原題:大佛普拉斯)』の英語版フライヤー、台湾で発行されている日本語情報誌「たびオン」、コスミック出版からご提供いただいた先日発売されたばかりの華流エンタメムック「華流日和」、そして台湾文化センターより大人気のスイーツ微熱山丘(サニーヒルズ)のパイナップルケーキ、合計20名の方にプレゼントしました。

0921event24来月のこのイベントは11月30日(土)、今年最後になります。
三代の女系家族を中心に、政治とビジネスを取り巻く複雑な人間関係と愛憎を描いた『血観音』。昨年大阪アジアン映画祭で上映されましたが、劇場未公開作品ですのでどうぞお楽しみに。
申し込みは11月5日(火)ひる12時からです。
詳しい申し込み方法は、後日お知らせします。

★リンクは有り難いのですが、写真や記事の転載は固くお断りします。

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